不動産向け貸出が全産業を上回る伸び
日本銀行が4月21日に公表した金融システムレポートは、国内の金融活動に大きな不均衡はみられないと評価する一方、不動産価格の上昇が続く中で不動産関連融資の伸びが高まっていると指摘した。不動産業向け貸出は全産業向けと比べて速いペースで増加しており、大手行では不動産ファンド向けのSPCやREITを含む分野でも貸出が増えている。銀行が一律に不動産融資を絞っている状況ではないが、日銀は貸出全体に占める不動産関連の比率が趨勢的に上昇している点や、与信先の構成が変化している点への注意を促している。
金利上昇で「価格上昇前提」の投資は難しく
不動産投資では、借入金利が低いほど賃料利回りとの差で収益を確保しやすい。しかし2025年末以降、日銀は政策金利を引き上げ、2026年7月には無担保コール翌日物の誘導目標を1.0%程度としている。借入金利が上昇すれば、同じ賃料・同じ購入価格でも投資家のキャッシュフローは悪化する。特に変動金利や短期借入への依存度が高い案件では、金利ストレスを織り込む必要がある。海外投資家も自己資金比率、ローン期間、通貨、借換え条件によって実質的なリスクが大きく変わるため、表面利回りだけでは投資採算を判断できない。
金融機関の姿勢と資産価格の連動を注視
日銀は日本の金融システム全体について安定性を維持しているとの評価を示しており、直ちに不動産金融が危機的な状態にあるとしているわけではない。むしろ注目点は、価格上昇と融資拡大が続いてきた市場が、金利正常化の過程でどのように変化するかにある。不動産価格が横ばいまたは下落に転じても賃料で返済できるか、空室が長期化しても資金繰りを維持できるか、借換え時の金利上昇に耐えられるかが重要だ。2026年の投資市場では、取得時の価格競争だけでなく、融資条件とストレス時のキャッシュフローを含む財務構造そのものが物件選別の中心になっている。