旧耐震複合ビルを住宅と店舗に転換
東京都は8月19日、「リノベーションによるアフォーダブル住宅供給チャレンジ事業」の第1回選定案件を発表した。選ばれたのは安田不動産による千代田区神田錦町のプロジェクトで、旧耐震基準の複合ビルを地域に開かれた店舗などとアフォーダブル住宅に改修する。住宅家賃は「近傍同種家賃の8割」を基準に算定する。2026年度中に設計または工事に着手し、2027年度中の改修工事完了を予定している。東京都は選定予定3件に達するまで引き続き提案を受け付けている。
新築だけでなく既存ストック活用で賃貸供給
東京では土地価格や建築費が高く、新築住宅だけで手頃な賃料の供給を増やすことには難しさがある。今回の制度は既存建物のリノベーションを使って住宅を増やす点が特徴だ。オフィスや複合ビルなど既存ストックを住宅用途へ転換できれば、建替えとは異なる方法で供給を増やせる。ただし旧耐震建物の改修では耐震性能、設備、用途変更、工事費などの条件が事業採算を左右するため、単純に古いビルを住宅へ転用すれば成立するわけではない。
周辺オーナーには賃料競争の新しい基準に
近隣同種家賃の8割を基準とする住宅が供給されれば、周辺賃貸市場では一つの比較材料になる。ただし対象戸数や入居条件によって地域全体の相場への影響は異なる。投資家にとって注目点は、都心で既存建物の用途転換と政策支援を組み合わせる事業モデルが具体化したことだ。東京の賃貸投資では、新築供給だけでなく、オフィスから住宅へのコンバージョンや既存ストック再生の動きも今後の競合供給として確認する必要がある。